- 受験生・保護者: 合否を分ける力を知りたい方へ
この選択肢、本当に〇(マル)ですか?
入試直前になると、質問の質がぐっと鋭くなる生徒が現れます。かつて指導していたK君も、そんな生徒の一人でした。
あるとき彼がこう聞いてきました。
「この選択肢、本当に○なんですか?」
問題の内容は「日本の国土面積は年を追うごとに増えている」というものです。この選択肢を作った出題者も見事ですが、それに対して疑問を持ち、自分で確かめようとするK君の姿勢も立派でした。
特に演習中心になる入試直前期は、一問一問にどれだけ深く向き合えたかが、合否を左右します。
選択肢問題は、ともすると雑に処理されがちです。ひどい場合には、答えを写して終わりという生徒もいます。そんな中、K君は選択肢の一つ一つを参考書を片手に丁寧に検証していました。自分で解決できないことは、納得できるまで質問する。だからこそ、彼の質問はいつも研ぎ澄まされ、的を射たものだったのです。
生徒の質問から生まれる「問題」
「国土面積」と言うと少し実感が湧きにくいかもしれませんが、都道府県レベルで見ると、東京や大阪、愛知などでは実際に面積が増えています。
もちろん、植民地を増やしたからではありません(笑)。
臨海部の開発が進み、埋め立て地が数多く造成されてきたからです。
こういうシャープな質問を受けると、指導する側も刺激を受けます。K君の問いをきっかけに、そういえばここ数年、「日本の排他的経済水域が国土面積の割に広いのはなぜか」といった問題がよく出題されていたことを思い出しました。
だったら同じ視点で、臨海部に大都市を抱える都道府県(東京や大阪など)の面積の推移と、内陸県(群馬や栃木など)の推移を並べてみたらどうだろう。なぜ東京や大阪では面積が増えているのか――。そんな記述問題も面白いかもしれない。そんなことを考えているうちに、少し斬新な切り口の問題が一題できあがりました。
AI時代に求められる「問いを立てる力」
こうしたやり取りをしていると、最近よく耳にする「問いを立てる力」という言葉を思い出します。AI時代の教育では、答えを探す力よりも、何を問うべきかを考える力が重要だと言われています。けれども、問いはただ思いつくものではありません。文章や問題文を丁寧に読み込み、違和感や引っかかりを見つける――。そんな深い読みがあってこそ、鋭い問いが生まれるのだと思います。
教師は生徒に育てられる
10年以上教える仕事をしていても、生徒から学ばされることは少なくありません。
「なるほど、そこに引っかかるのか」
「そんな視点の質問があるのか」
こちらが想定していなかった問いを投げかけられると、知識同士が化学反応を起こし、新しい切り口の問題が生まれることがあります。
生徒が「問い」というボールを投げてくるピッチャーだとしたら、教師はそれをしっかり受け止めるキャッチャーです。教師は、生徒を育て、生徒は教師を育てる。この息の合ったバッテリーの関係が、お互いの成長を促します。

